2024.8.26
退去について
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
増田 高茂(ますだ たかしげ)

施設を退去するのはどんな時?

退去について

一旦入所されると、それまでご自宅で介護されていた方などは、少し肩の荷が下りたような感覚になることもあるかもしれません。しかし、しばらくその生活に慣れてくると、もし、施設を出なければいけないと考えたときに、どうしたらいいんだろうと考えてしまうのではないでしょうか。ここでは施設を出るときについて説明します。

ご逝去

施設で亡くなられた際や、施設から病院に入院して亡くなられた際は当然ですが退去となります。気を付けなければならないのが契約解除となるのがいつになるかという点です。契約解除は基本的にご家族からの申し出により決定します。また、サ高住など賃貸借契約の場合は、通常の不動産契約と同じように、退去の申し入れから1か月後に解約となるのは珍しくありません。詳しくは入居時の契約に記載されているので確認しておくと良いでしょう。

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医療状態

施設入所の際に提示される入居要件は、そのまま退去が必要となる条件と読み解くことができます。施設によりその度合いは様々なですが、施設で対応できない医療処置が必要となった場合、退去を求められることになります。ただし一般的にはそのような医療状況になるまでには、何らかの形で入院し、その退院時に受け入れができないと判断される場合がほとんどです。受け入れできない場合には病院の相談員から医療対応が可能な施設を紹介されるので、そちらに移ることになります。この場合、他の施設に移ることが確定した段階で、契約中の施設に退去の申し入れをすることになります。

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認知症の進行

認知症もその度合いにより様々です。介護施設では軽度の物忘れなどは当たり前なほど認知症の方は多く、中には意思疎通ができないほど、重度の方もいます。その中で認知症により退去を求められてしまうのは、他の入居者に害が及ぶようなケースです。徘徊するくらいの状態はよく見られるため、大きな問題とはなりにくいですが、暴言や暴力といった行為に出るケースもあり、その対応が難しくなります。特定の方に対してであれば、施設の対応で回避することもできますが、対象を問わずとなるとさらに対応が困難となります。認知症の症状や認知症による行動には様々なものがありますが、それらの症状が複雑に絡むと対応が難しくなることが多いと言えます。医師による薬の処方等で抑制することができれば対応可能となりますが、施設では他害行為が退去の対象となることが多いため、それでも難しい場合は退去を求められる場合があります。

また、認知症が重度化することで「食べる」という行為が認識できなくなるような方もいます。職員が介助して食べることができればよいのですが、さらに進行し食べることができなくなってしまうと生命の危機と言える状況となります。医師と相談しながら対応していきますが、場合によっては入院等が必要となり、退去となるようなケースもあります。

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介護度の改善によるもの

施設の種類によっては介護度により入居が認められないものがあります。施設での生活が落ち着くことで、状態が改善、介護認定結果により退去しなければならないというケースもあります。ただし、「施設」という環境下であるため落ち着いていて、退去することで状態が元に戻ることが予測されるような場合もあります。介護保険は認定結果に対して不服申し立てができるようになっているので、施設と相談しながら対応することをお勧めします。

まとめ

施設では安心した生活を続けられるよう、日々入居者の健康状態を観察し、また、ストレスのない生活となるよう様々な取り組みをしています。しかし、介護が必要な高齢者は常に状態が変わりやすいと言えます。エアコンの効いている部屋にいても、外気の急激な冷え込みや気温の上昇に影響を受ける方は少なくありません。そのような状態なので、せっかく入居できた施設でも短期間で対処しなければならないケースもあることは頭の片隅に置いて置く必要があります。

社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
増田 高茂(ますだ たかしげ)

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。